喉(のど)の奥にある扁桃(へんとう)は、主にリンパ組織からなる器官です。扁桃には、
① 口蓋扁桃(こうがいへんとう)、
② 舌根扁桃(ぜっこんへんとう)、
③ 咽頭扁桃(いんとうへんとう=アデノイド)、
④ 耳管扁桃(じかんへんとう)、
⑤ 咽頭側索(いんとうそくさく)
などがあり、どれも喉の周りにあって喉を防御するように輪状に連なっています。
専門的にはこれらの器官を「ワルダイエルの咽頭輪」と呼んでいます。ワルダイエルは、これらの咽頭を発見したドイツ人の医師の名前です。
単に「扁桃」といった場合は、通常、口蓋扁桃を指します。口を大きく開けると喉の奥の両側に見えるアーモンドのような器官が、口蓋扁桃です。
ところで、扁桃は侵入した細菌などを殺菌する効果のある白血球を多く含んだリンパ組織からできていて、その役割は外から進入した細菌やウイルスなどの病原体が身体に入り込むのをくい止めることです。しかし、侵入した病原体が強かったり、逆にヒトの身体が弱っていて白血球の働きも弱くなっている場合には、扁桃の中で病原体が暴れて強い炎症を引き起こします。これが「急性扁桃炎」です。
健康な時は免疫力が感染力を上回っているために、病原体を打ち負かして炎症は起こりませんが、体力が落ちて病原体の感染力が免疫力を上回ると炎症が生じてしまいます。
つまり、免疫力と感染力の力比べで、感染力が勝ると「扁桃炎」が発症してしまうわけです。
炎症を起こした扁桃は、
赤く腫れたり、膿(うみ)を持ったりして激しく痛みます。
同時に高熱や全身倦怠感(けんたいかん)も生じます。
さらにひどくなると、
炎症や腫れのために、食べ物が痛くて飲み込めなくなることさえあります。
そして、このような急性の炎症をたびたび繰り返してしまう状態を「慢性扁桃炎」といったり、何度も炎症を反復するので「習慣性扁桃炎」ということもあります。
なお、昔は「扁桃炎」を「扁桃腺炎(へんとうせんえん)」と呼ぶこともありましたが、扁桃は器官であってリンパ液を分泌している「腺」とは異なるので、正しくは「扁桃炎」です。