急性扁桃炎の炎症が急速に周囲にまでおよぶと「扁桃周囲炎」に進みますが、さらに症状が進んで「扁桃周囲膿瘍」を起こした場合は、特に注意が必要です。
扁桃周囲膿瘍は、炎症部分が膿瘍を形成してしまった状態で、原因となった細菌の力がとても強いか、体調がよくなくて感染症に対する抵抗力が低下している場合にここに至ります。
時には、魚の小骨が刺さった部位から炎症がはじまったり、「親しらず」などで歯肉が炎症を起こしたことがきっかけで「扁桃周囲」⇒「扁桃周囲膿瘍」と進んでしまうこともあります。
「扁桃周囲膿瘍」の症状として、扁桃周囲の激しい腫脹と発赤、高熱、強度の咽頭痛と嚥下痛(えんげつう)、開口困難(口が開けにくくなる)――などが見られます。
そして、しばしば開口困難のために、医師が喉を観察することが困難になるほどです。
さらに重篤になると気道の閉塞(へいそく)を起こして呼吸困難となることさえあります。
また、膿が首の深いところまで入ってしまう「深頸部膿瘍」や膿が心臓の周囲まで下りてしまう「縦隔膿瘍(じゅうかくのうよう)」まで、進展してしまうこともあり得ます。
深頸部膿瘍や縦隔膿瘍まで進むことは極めてまれではありますが、これらの病気は生命に関わりますので十分な注意が必要です。
「扁桃周囲膿瘍」の治療は、入院して十分な量の抗生剤を点滴投与するとともに、局所を切開して排膿を行います。
通常は、切開して排膿すれば急速に開口困難は治っていきます。とはいえ、患者さんは開口困難なのですから、実際は切開して排膿することはとても難しいのです。
したがって、扁桃周囲炎を起こしていて、扁桃周囲膿瘍に移行しそうな場合は、早めに入院して抗生剤の点滴治療を開始することが必要です。