通常の「急性扁桃炎」では解熱鎮痛剤などで症状の軽減を図りながら、適切な抗生剤の内服、重症である場合には点滴注射を行って、原因となった細菌などをやっつけます。
内科ではなく耳鼻咽喉科ならではの治療に「ネブライザー治療」がありますが、ネブライザー治療は、霧状の薬剤を鼻・口から吸入することで喉や鼻の患部に直接薬剤を当てるもので、扁桃炎では、口から喉に薬剤を当てます。ネブライザー治療を行うことにより患部に効率よく薬を作用させると同時に喉が潤うので、それだけでもとても楽になります。
喉の痛みというと内科を受診しがちですが、耳鼻咽喉科でのネブライザー治療は有効な治療です。併せて、家庭でうがいをすることも喉を潤し、清潔を保つのによい方法です。
扁桃炎に対する薬物治療として、細菌が原因となっている場合には抗生剤による治療が有効です。細菌の中でも、溶連菌が原因の場合は、合併症として「急性糸球体腎炎」「アレルギー性紫斑病」「リウマチ熱」を合併することがあるので、特に、抗生剤治療が肝心です。
通常、ペニシリン系抗生剤、セフェム系抗生剤、アジスロマイシン(ジスロマック)などが用いられます。
一方、ウイルスが原因の場合は、単純ヘルペスを除いてこれといった特効薬がありません。そこで、通常は抗生剤を使用せずに症状に応じた治療を行います。例えば、発熱に対しては解熱剤、関節痛には痛み止めの内服や湿布薬、喉の痛みにはうがい薬やトローチ、といった具合です。
ウイルスが単純ヘルペスと分かった場合には、それらに加えて、水疱瘡(みずぼうそう)の治療にも用いられるアシクロビル(ゾビラックス)やバラシクロビル(バルトレックス)といった抗生剤を内服します。
通常の「急性扁桃炎」なら、これらの治療で回復に向かいます。しかし、発症初期に適切に治療しないで炎症が長引くと、「慢性扁桃炎」に移行する場合があるので注意が必要です。
「慢性扁桃炎」とは、扁桃内に細菌が住みつき、微熱や全身倦怠感などの症状が発症する病気です。疲れやストレスなどでさらに免疫力が落ちてくると、住み着いた細菌が増殖し、炎症がひどくなって急性扁桃炎と同様の激しい症状が出てきます。治療を行うと数日~1週間で回復しますが、疲れて免疫力が低下するとまた強い炎症が起こります。
1年間に4回以上このような経過をたどる場合、特に「習慣性扁桃炎」と呼びます。習慣性扁桃炎は薬では根本的に治せない場合があるので、このような場合は手術で扁桃を摘出することも検討することになります。
一般的に扁桃摘出術は、口の中からの操作で口蓋扁桃を取りますが、手術は全身麻酔あるいは局所麻酔で行われ、入院期間は手術をした翌日から10日間ほどです。
手術に伴うもっとも危険な合併症は「術後出血」で、手術後5~10日目に起こりやすいといわれ、原因は、手術後の傷についた瘡蓋(かさぶた)が剥がれるときの出血と考えられていますが、はっきりと解明されているわけではありません。
なお、慢性扁桃炎のある種のものは、扁桃の症状はほとんどないにもかかわらず、別の臓器に悪影響を及ぼします。
これらは、「扁桃病巣感染症」と呼ばれ、腎臓や手のひら・足の裏の皮膚に症状があらわれることが多く、腎臓に現われたものを「IgA腎症」、手のひら・足の裏に現われたものを「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」と呼んでいます。
これらの治療にも扁桃摘出術が有効な場合があります。
それぞれについての詳細は、「扁桃炎に関連する病気」を参照してください。