血管が炎症を起こし、
①皮膚の出血斑(紫斑)
②腹痛や血便
③関節の腫れ
④尿量の減少や足のむくみ
などが現われる病気で、患者さんの多くは3~10歳のお子さんです。患者さんの約50%に扁桃炎などの先行感染が見られ、感染後1~2週間で発症することが多いようです。
また、約半数に腎炎が併発し、「紫斑病性腎炎(しはんびょうせいじんえん)」と呼ばれます。
アレルギー性紫斑病は、発症から数カ月くらいはいったん抑えられていた症状が悪化することがありますが、多くは予後のよい病気です。ただし、まれに数年の間隔をおいて再び発症することがあったり、腎障害の強かった場合には、一度改善しても後に腎機能が低下したり、女性では妊娠中に腎機能が悪化する場合があることも心しておく必要があります。
アレルギー性紫斑病の原因は究明されていませんが、溶連菌が原因の扁桃炎の後に発症することがあることから一部のものは溶連菌が関与していると考えられています。副鼻腔炎(蓄のう症)を発症していることもしばしばです。
溶連菌のほか、ブドウ球菌や水痘(水ぼうそう)・肝炎・麻疹(ましん:はしか)・風疹(ふうしん)などのウイルス、マイコプラズマ――が原因の扁桃炎が先行する場合もあります。
突如、①出血斑、②限局性浮腫、③関節の異常、④腹痛、⑤腎炎――などが起こります。
約半数に、扁桃炎などの先行感染が見られます。
①足関節周囲を中心に左右対称にわずかにもり上がった出血斑が出現します。場合により腕、身体、顔面などにも広がります。靴下や下着などで圧迫されている場所に強く現われることがあります。
まず、軽い痒み(かゆみ)を伴ったじんましんのような発疹ではじまり、次第に紫色の出血斑になります。湿疹(しっしん)などと区別するには、赤い部分を指で押してみます。色が消えれば湿疹などによる「発赤」、消えなければ「出血斑」です。
②多くの場合、足関節周囲とふくらはぎに浮腫が見られ、痛みを伴います。頭や顔、背中などにも痛みを伴う大きな浮腫が出現することがありますが、腫れに伴う発赤はありません。
③約3分の2の患者さんに関節炎が出現し痛みます。通常、足関節・手関節が中心で左右両側に起こります。股関節や肩や指の関節には起こりませんが、歩行が困難となることも少なくありません。
④約半数の患者さんに反復して強い腹痛が起こり、時として嘔吐(おうと)を伴います。痛みが激しい場合には、急性腹症として手術されることがあるほどです。血便あるいは便潜血(目で見ては分からないものの検査をすると血液反応が見られる)を認めることがあります。男子の場合、陰嚢(いんのう)や精巣の腫脹と疼痛、出血が認められることもあります。
⑤患者さんの約半数に腎炎が現われます。出血斑が見られてから3カ月以内に起こることが多いのですが、1年くらい経ってから起こることもありますので、定期的な検尿を続けることが重要です。
隆起性の紫斑に伴い、①全般性の腹痛
②生検によればIgAを主体とした沈着
③急性関節炎・関節痛
④腎合併症(血尿または蛋白尿)
のいずれかがある場合にアレルギー性紫斑病と診断されます。出血班を見れば診断は比較的容易ですが、出血斑が出現しないこともあるので、その場合には診断が難しくなります。
また、紫斑を伴う「血小板減少性紫斑病」など他の病気との鑑別診断も必要になります。
急性期は安静を保ち、溶連菌による扁桃炎などの先行感染がはっきりしている場合には、まず、原因菌に対して有効な抗生剤を投与します。次に症状に応じた治療として、関節痛には、アセトアミノフェンなどの投与や経皮鎮痛消炎剤を用います。腹痛が強い場合には入院が必要な場合もあります。抗生剤とともにステロイドの注射などを行ったり、腸管に潰瘍(かいよう)が確認された場合には、抗潰瘍薬を加えることもあります。
また、長期に渡り腹痛や関節痛が持続する場合で、血液凝固第Ⅷ因子が低下している場合には、同因子の補充を考慮します。また、紫斑病性腎炎が出現し、蛋白尿が悪化する場合には小児腎臓医の受診が必要と考えます。紫斑病性腎炎が長期間にわたり特定の薬による治療が必要な場合には、「小児慢性特定疾患」として医療費の補助を受けることができますので、主治医か保健所へお尋ねください。