膿栓とは、喉の奥の口蓋扁桃のくぼみにできる黄白の固形物のことで、俗称「におい玉」「くさい玉」などと呼ばれています。急性扁桃炎を起こした後に、突然口から飛び出して、つぶすとすごく臭いので驚いた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この膿栓の正体は、細菌と白血球の死骸に食べ物のカスなどが合わさってできたもので、大きさは1mmくらいのものから、ピーナツくらいの大きさになるものもあります。
扁桃の役目は、外から侵入した細菌などをブロックして、体内に入れないようにすることですが、扁桃の表面には陰窩(いんか)あるいは腺窩(せんか)と呼ばれる多数の小さな穴が開いています。それは、穴があることで全体として表面積を大きくして、細菌などをより効率的に殺せるようにするためです。
その陰窩の奥に、扁桃組織の壊死細胞、細菌の死骸である細菌塊、食べ物のカス等が溜まりかたまります。
この塊(かたまり)が膿栓で、雑菌が生成する化学物質を含んでいるので特有の悪臭があります。
扁桃は鼻や口から侵入してくる細菌などと戦う役割を持ち、外から侵入した細菌などと白血球は常に戦っているわけですから、その死骸が扁桃に存在するのは当たり前です。つまり、健常な方でも膿栓があるのはよくあることで、特に支障がなければ放置してもなんら差しつかえありません。
しかし、高熱や喉の痛みがでる急性扁桃炎を1年に何度も起こす方、扁桃自体はさほど大きくなくても扁桃周囲炎や扁桃周囲膿瘍などの重症化を招きやすい方、慢性扁桃炎の方、あるいは、いびきや睡眠時無呼吸症候群の原因となるような扁桃肥大がある方の場合は、扁桃の摘出を行います。
また、膿栓は口臭の原因のひとつと言えることから、胃病や歯周病がないのに口臭が気になったり、膿栓が大きくなることで喉に違和感を覚えるような方は、膿栓の吸引や陰窩の洗浄といった治療を行うことが可能です。
しかし、膿栓の吸引や陰窩の洗浄は、一時的に膿栓や膿汁が除去されることで喉の不快感は改善しますが、1回行ったからといって、膿栓のすべてが取りきれるわけではないので、溜まれば何度でも吸引や洗浄を行うことが必要です。処置を行う頻度は、目安として最初は週に2~3回、症状が改善してきたら週に1回、その後は気になる症状が出たときと考えてください。
なお、このような扁桃処置は急性扁桃炎や慢性扁桃炎の急性増悪時などの扁桃が腫れているときや痛みがあるときには、かえって症状を悪化させることがありますから行いません。抗生物質や消炎剤を内服して炎症が治まって痛みや腫れが引いてから行います。
また、うがいを頻回に行うことでも症状は改善されます。膿栓を自分で取ることは、症状を悪化させたり、IgA腎症や掌蹠膿疱症といった病気を引き起こす原因ともなり得ますので、絶対に止めて、家庭ではうがいで対処しましょう。